レザークラフトでは、菱目打ち(ひしめうち)という道具を使用して、縫うための穴を開けます。
また、菱目打ちには『目数』といって、刃の数が1本だったり4本のモノがあったります。
状況に応じた目数の菱目打ちを使うことで、一つの革小物を作り上げることになります。
本記事では、菱目打ちの使い方と目数ごとの用途についてご紹介していきます。
菱目打ちとは『縫い穴』を作る道具
冒頭でも紹介しましたが、菱目打ちとは、縫うための穴を開ける道具です。
その名の通り、菱型の穴を開けることができます。
革は、繊維が緻密で、意外に思えるほど丈夫に出来ているので、そのままでは縫い針は通りません。
そのため、手縫いで縫い作業をする場合は、この菱目が絶対に必要になるのです。
この菱目に糸を通し、革を縫い合わせていくのがレザークラフトの基本です。
菱目打ちの先端の形状は、このように菱型になっています。
尖ってはいますが、触ってケガをするほど鋭利にはなっていません。
穴の空け方については、次の菱目打ちの使い方でご紹介していきますね。
菱目打ちの使い方&必要な道具
菱目打ちで革に穴を開けていくには、以下の道具を使用します。
菱目打ちに必要な道具
- 菱目打ち
- ゴム板
- ハンマー
参考までに、この記事では、以下の菱目打ちを使用しています。
菱目打ちのやり方ですが、このように革に垂直に構えて、ハンマーで叩きます。
革は意外と硬いので、1発叩いただけでは穴は空きません。
適度な力で、数回ほどハンマーを打ちおろして菱目を開ける。これを繰り返していきます。
この時、下敷きとしてゴム板(硬めのゴムで出来た板)を使用しています。
刃先が革を貫通した後に適度にゴム板にめり込むので、刃先を痛めずに使用することができます。
この写真で、少しでも質感が伝われば幸いです。
菱目打ちの刃先が、少し貫通する位が適切な打ち込みになるので、下敷きは必要ですよ。
ホームセンターで売っているゴムの板は柔らか過ぎる物もあるので、硬いゴム板を選びましょう。
菱目打ちの『目数』|具体的な使用例
菱目打ちには、刃先が1本になっているものや、2本以上あるものがあります。
この刃先の数を『目数』と呼びます。
また、刃先が1本の菱目打ちは1本目、2本のモノは2本目と呼ばれます。
当たり前ですが、4本目の菱目打ちを打ち込めば、一度に4つの菱目を開けることが出来ます。
じゃあ目数が多い菱目打ちの方が、ドンドン穴を開けられてラクそうだね!
ところが、そうではありません。
刃先が1本のモノにも、2本のモノにも、それぞれ明確な役割があるのです。
それぞれの目数の、具体的な使用例を見ていきましょう。
『4本目』の菱目打ち【使用例】
使い方が一番単純な、4本目の菱目打ちの使い方からご紹介します。
まず、4本目の菱目打ちの特徴を見てみましょう。
4本目の特徴
- 等間隔の菱目が開けられる
- まっすぐ菱目を開けられる
- 一度で菱目を量産できる
上記の通り、まっすぐで等間隔に揃った綺麗な菱目を、連続で開けるための菱目打ちです。
4本目と言っていますが、5本目だったり、10本目の菱目打ちもあります。
それら4本目以上の菱目打ちの使い方は、どの目数でも同じ用途だと覚えておきましょう。
具体的な使い方ですが、以下のように長い直線に対して、菱目を開ける時に使用します。
刃先の始点と終点の位置に気を付ければ、まっすぐ綺麗な穴を並べることができますよね。
更に直線を伸ばす時は、先に開けた穴に、1~2目ほど刃先を重ねた上で打ち込みます。
こうすることで、等間隔でまっすぐな菱目を量産することができるのです。
1本目でやるとすると、打ち込む位置が多少ズレたりして、穴が等間隔ではなくなります。
また、菱目打ちを構える角度がズレたら、穴も曲がってしまいますよね。
分かりやすい比較できるように、ガイドラインからズレたり、角度が違う菱目を開けてみました。
このように菱目がズレてしまっていると、縫い目もガタガタになり、かなり見栄えが悪くなります。
頑張れば、1本目でも綺麗に連続した菱目を開けることもできると思いますが、時間も掛かります。
10本目なら1回の打ち付けで済むところを、1本目では10回やる必要があり、手間ですよね。
4本目以上の菱目打ちは『直線』を綺麗に開けることができる!
『2本目』の菱目打ち【使用例】
では次に、2本目の菱目打ちの使い方です。
2本目の特徴
- 曲線にも対応できる
- 縫い穴の辻褄合わせ
先ほどの、4本目以上の菱目打ちでは、曲線を作ることはできません。
ですが、この2本目であれば、このように曲線に沿った菱目を開けることが出来ます。
これは極端な曲線ですが、角を丸くしたお財布などの菱目を開ける時にも便利です。
私も、角の部分に菱目を開ける時には、ほとんどこの2本目を使用して開けています。
参考用に、以前に作ったこの『直線が一切ないマウスパッド』もご紹介します。
こちらは、全て2本目の菱目打ちで開けています。
曲線が打てるようになると、デザイン力も上がってきますので、2本目はとても重要です。
もう一つの利点として、縫い穴の辻褄合わせにも使用することが出来ます。
縫い穴を開けていくと、以下のように、等間隔では開けられない時があります。
上の写真では、終点の位置が、開けてきた菱目の間隔と合わないケースです。
そんな時は、2本目を使ってズレを均等にします。
まず、終点に菱目打ちの刃先をかけながら、軽く「あたり」を付けます。
「あたり」を付けた部分には、分かりやすく色を付けることにしますね。
今付けた「あたり」に刃先を掛けて、次の「あたり」を付けます。
次に、反対側からも「あたり」を付けますが、分かりやすいように色を変えます。
菱目に刃先をかけて「あたり」を付けます。
今付けた「あたり」に刃先をかけ、もうひとつ「あたり」を付けます。
4箇所付けた「あたり」を見てみると、どれも重なってないのが分かりますね。
この「あたり」と「あたり」の間が、等間隔で穴を開ける位置になります。
最終的に穴を開けるのは、次で説明する1本目の役割です。
2本目の菱目打ちは、ゆるやかな曲線の菱目を作れる。
また、辻褄合わせの「あたり」を付けるのに便利!
『1本目』の菱目打ち【使用例】
では、1本目の使い方と特徴です。
1本目の特徴
- 辻褄合わせの仕上げ
- 細かい曲線にも対応
先ほど、2本目を使った終点との辻褄合わせは、この1本目で仕上げます。
こうすることで、完全な等間隔で開けられなかった菱目も、極力目立たないようになります。
あとは曲線への対応ですが、2本目よりも細かい曲線に対応できます。
例えば、このような直角に近い角でも、曲線に対応した菱目を開けることが出来ます。
1本目の菱目打ちは、微調整をするために使用される。
辻褄合わせの仕上げと、急な曲線の対応に便利!
縫い穴はどうして菱目なのか
レザークラフトの縫い穴が菱型になっている理由は、いくつか考えられます。
縫い穴が菱型な理由
- 縫い目の見栄えが良くなる
- 縫いやすい
- 縫った後に穴が目立ちにくい
最初に見栄えの話になりますが、菱目に沿って縫っていくと、このような見た目になります。
「この斜めのステッチが好き!」という人も結構いらっしゃるかと思います。
縫いやすいという理由についてはどうでしょう。
まず、レザークラフトでは、平縫いと呼ばれる2本の針を使った縫い方が基本です。
平縫いは、1つの穴に2回針と糸を通す縫い方になります。
そのため、2本目を通す時には、菱目の鋭角の部分に1本目の糸を寄せることができるので、2本目が通しやすくなっています。
この辺りは、実際に縫ってみると実感できるかと思います。
平縫いのやり方について調べる時は、こちらの記事を参考にしてみてください。
でも、レザークラフトで開ける縫い穴は、必ずしも菱型とは限りません。
まん丸の穴だったり、ヨーロッパ目打ちという細い斜めの線のような穴を使う人もいます。
この場合、菱目の時と縫った時の見た目も変わるので、どれを使うかはその人のセンス・好みです。
【まとめ】菱目打ちの使い方
菱目打ちの使い方や、目数ごとの用途についてご紹介しました。
まとめ
- 菱目打ちは縫い穴を開ける道具
- ゴム板とハンマーがあればOK
- 目数ごとに用途が違う
- 1本・2本・4本目は揃えたい
ひとつの革小物を作るにも、曲線や辻褄合わせ、長い直線など色々な場面があります。
1本・2本・4本目以上の菱目打ちは、最低限そろえておきたいところです。
菱目打ちには、ピッチと呼ばれる穴同士の距離や、刃幅の大きさも様々あります。
1本ずつ購入する場合は、ピッチや刃幅がバラバラにならないように気を付けましょう。
そんな時は、この記事も参考にしてみてください。
また、以下のようなセット品なら、サイズがバラバラになることも無いので安心ですよ。
菱目打ちの作業自体は難しくないので、レザークラフトをやったことが無くても大丈夫です。
革に穴を開ける時『レザークラフトをしてる』という実感を得られて、とても楽しめる作業ですよ。
ここまで読んでいただき、有難うございました。
レザークラフトは奥が深くて楽しいので、ぜひ初めてみてくださいね。