レザークラフトにおいて、作品を綺麗に作る要(かなめ)とも言えるコバ処理。
細かい部分ですが、磨き上げるという行為に職人魂をそそられますよね!
本記事では、私が普段やっているコバ処理の仕方をご紹介しています。
コバ処理は、ツヤの出し方など作り手の好みもありますし、使う革によってもやり方が変わります。
そのため、「これが間違いない方法だ!」というものは、なかなか見つけることができません。
本記事も、ひとつの参考としてご覧いただければ幸いです。
コバ処理:ヌメ革の磨き方
今回は、ヌメ革のコバ処理の仕方をご紹介します。
この、1mmのヌメ革を2枚貼り合わせたモノを使ってご説明していきます。
コバ処理に使う道具
私が、コバ処理に使う道具は以下のとおりです。
コバ処理の道具
- ヘリ落とし
- ドレッサー
- サンドスティック
- コバ処理剤(トコフィニッシュ)
- ウッドスリッカー
- 帆布
コバ磨き剤はトコフィニッシュを使っていますが、トコノール、トコプロでもOKです。
『ヘリ落とし』をする
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1ヘリ落としで整える
まずは、ヘリ落としを使って、コバのヘリを落としていきます。
角度が変わると、ヘリが部分的に凸凹になるので、一定の角度を保ちましょう。
ヘリを落とす前のコバの断面がこちら。
そして、両面のヘリを落とした状態がこちらです。
私の場合は、1~2mm厚の革で小物を作ることが多いのですが、1mmのヘリ落としを良く使用しています。
ココがポイント
ヘリ落としをすることで、角が取れてコバが滑らかになる。
また、パーツを複数使う作品の場合、要所でヘリを落としてあげることで、革パーツに一体感が生まれる。
このヘリ落としという作業は、作り手の好みでやるかどうか決めて大丈夫です。
『やすり掛け』をする
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2やすり掛けをして平滑に
ヘリ落としの後は、やすり掛けをしていきます。
ヘリを落としたコバの断面は、少し角が立っている状態です。
以下の図のように、その角を慣らしていくイメージでやすり掛けをしていきます。
ココがポイント
角を落とすことを意識しすぎると、コバが潰れてしまう。力加減は、コバを慣らしていくような感じがベスト。
どんな『やすり』を使う?
私の場合、以下の3種類のやすりを使っています。
やすり掛けの流れ
- ドレッサー(中目)
- 番手600のサンドスティック
- 番手1000のサンドスティック
「ドレッサー」⇒「#600」⇒「#1000」と、番手が上がるほどやすり掛けの回数は増やしています。
回数は特に決めてません。納得いくまでやります。
ココがポイント
やすりは、面がしっかり保てるドレッサーやサンドスティックが、均等に削りやすくおすすめ。
やすりの番手は、削る力によって効果が変わるので、自分に合ったモノを探してみましょう。
やすり掛けのコツは?
また、コバに凹凸が出来ないように、以下の事を意識して行います。
やすり掛けで意識すべき事
- 革が潰れないように適度な力で
- やすりの角度を一定にしつつ
- コバ全体を均等に削る
特に、ドレッサー(中目)は結構削れるので、力加減はかなり控えめにしています。
コバを磨く
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3コバ磨き剤で磨く
コバが成形出来たら、コバ磨き剤とスリッカーで磨いていきます。
今回は、トコフィニッシュを使います。
まずは、コバからはみ出さないようにトコフィニッシュを塗布します。
ウッドスリッカーを使って磨いていきます。
磨く回数は特に意識しておらず、『ツヤ』と『カキカキという手応え』が出るまでやります。
スリッカーとコバの形状が一致しているかも大事なポイントです。
どうしても革の厚みとスリッカーの溝が合わない場合は、丸平タイプのスリッカーの平面で磨くと良いでしょう。
ココがポイント
平面で磨く場合は、先にヘリを落とした面を磨き、最後にコバの側面を磨くと綺麗に仕上がる!
さて、1回目のコバ磨きが終わって、少しツヤが出ていますね。
この状態から、もう一度トコフィニッシュを塗布して、もう一度同じ作業をします。
ただし、トコフィニッシュの塗布は、1回目より少なめに塗布するのがポイントです。
ココに注意
1回目で革にある程度トコフィニッシュが浸透しているので、2回目に同じ量を塗るとコバからはみ出してしまう危険あり!
もう一度磨いて、完成です!
未処理、処理1回、処理2回のコバの仕上がりを比較してみましょう。
2回磨いたコバの方が、ツヤが増しているのが分かりますね。
やすり掛けしただけのコバとは全然違います。
もし、2回磨いても納得がいかない時は、少しやすりを掛け、もう一度同じ作業を繰り返したりして、仕上げていきます。
繰り返しやってみると、コバのツヤや触り心地が全然違うのが分かると思います。
※ただ、やればやるほど自己満足の世界にのめり込んでいきます。(磨くの楽しい!)
また、場合によっては、コバを仕上げていく過程でフチ捻も使ったりします。
フチ捻の用途や使い方は、以下の記事を参考にしてみてください。
革によってコバ処理の仕方を変える
今回は、ヌメ革の『バット』という固めの部位を使用しています。
もしも、もっと柔らかめの革を使う時は、その革に合わせた磨き方が良いでしょう。
コバを崩さないように
- 力加減を落とす
- やすりの番手を上げる
例えば、柔らかい革に対して普通にドレッサーをかけると、少し削れ過ぎてしまうかもしれません。
使う革の程度を見て調整していきましょう。
革によって力加減を変える必要がある理由については、以下の記事で紹介しています。
『帆布』はコバ処理がしやすい
コバ処理には『帆布(はんぷ)』も良く使われます。
しっかりツヤを出すことが出来るので、スリッカーは使わず、帆布だけで磨く人もいるくらいです。
使い方はスリッカーの時と一緒で、コバに磨き剤を塗った後、帆布でこするだけです。
また、スリッカーと比べて力加減が容易なことも、魅力のひとつです。
なぜなら、帆布で磨く場合は指がクッションとなるため、コバを潰しにくいのです。
特に、デザイン的にデリケートなところなどは、帆布が活躍してくれます。
また、こういったスリッカーでは磨きにくいところも『帆布』があると便利ですね。
【まとめ】コバ処理の重要性
コバは、丁寧に磨いていけば、目を見張るほど綺麗になっていきます。
逆に言うと、手を抜いたらすぐに分かる部分でもありますね。
コバの仕上げ方の上手さが、作品のクオリティに大きく影響するということになります。
今回は無色のトコフィニッシュを使いましたが、染色したり、ワックスを塗ったりと、処理の仕方によってテイストがガラッと変わるので、工夫をこらせる部分でもあります。
コバが綺麗に磨けると職人に近づけた気がして、もっとレザークラフトが楽しくなると思います。
本記事が、『自分なりのコバ磨きを探す』ための、参考になれば幸いです。