レザークラフトでは、『床面処理』といって、革の裏側部分を磨くことがあります。
っていうか、そもそもなんで磨く必要があるの?
本記事では、革の床面の磨き方と、床面処理をするメリットをご紹介しています。
床面処理をするメリットは主に2つ
床面処理のやり方を勉強する前に、なぜ床面処理をする必要があるのかを知っておきましょう。
結論から言うと、床面処理は『見た目UP & 耐久性UP』のために行います。
なぜ、見た目と耐久性がUPするのでしょうか。
その理由について説明していきます。
床面処理で見た目UP!
まずは床面処理をしたモノと、していないモノを比較して見てみましょう。
右側が床面処理をした革で、左側は何もしていない革です。
床面処理をした方は、床面がツヤツヤしてるのが見て取れるかと思います。
これは、床面処理剤を使って磨いた効果です。
床面処理剤で磨くと、床面にツヤが出るので見た目が良くなります。
また、触った感じもツルツルになるので、手触りも良くなると言って良いでしょう。
床面処理剤っていうのは、具体的にどんなものなの??
床面処理剤とは、主に無色や乳白色のペースト状の薬剤です。
※中には、革の染色用に着色されたものも有ります。
特に使いやすく、手に入れやすいのが、以下の3種類です。
先ほど見ていただいた床面は、トコノールを使って磨いたモノです。
使い方は、のちほど説明しますね。
床面処理で耐久性UP!
さて、床面処理剤で磨いてツヤツヤになった床面ですが、耐久性も上がっています。
なぜかと言うと、革の繊維に処理剤のコーティングが形成されたからです。
牛革などの動物の革は、実は繊維の集合体です。
まだ磨いてない床面を、拡大して見てみましょう。
このケバケバは、水や汚れを吸い取り、毛羽立ってる方が吸収率も高くなります。
では次に、床面処理を施した後の床面を拡大して見てみましょう。
この透明でツヤツヤしているのは、床面処理剤の材質である水溶性の樹脂です。
この樹脂が、革の繊維にコーティングを張ってくれているという訳ですね。
コーティングの効果
- 水や手脂の吸収を抑える
- 砂や埃などの汚れをはじく
- 結果的に耐久性UP!
上記のように、床面処理をすると耐久性が上がるので、長く使える作品になりますよ。
今回は写真で伝わるように、普段より多めにコーティングを施しました。
テカテカが気になる人は、少し薄めにしても良いでしょう。
床面処理の手順|綺麗に磨くためのコツ
それでは、床面処理の手順を見ていきましょう。
step
1床面処理剤を塗布する
ムラがあると見た目が悪くなるので、均一を意識しながら床面処理剤を塗布します。
写真は、右側の革にだけトコノールを塗布した状態です。
step
2スリッカーで磨く
平らなスリッカーを使用して床面を磨きます。
スリッカーを押し付けながら「カキカキ」という手応えを感じながら磨きましょう。
スリッカーではなく、ガラス板を使っても良いですね。
スリッカーよりも力を掛けやすく、磨きやすいと思います。
ただし、力の入れすぎには注意です。
力を入れすぎると・・・
- 部分的に色が濃くなったりする
- 革が伸びてしまう
こちらは、塗る量にムラがある状態で、磨きに力を掛け過ぎた床面です。
部分的に色が濃くなってしまっていて、とても綺麗とは言えませんね。
あとは、手触りや見た目を見ながら、納得いくまでステップ1、2を繰り返しましょう。
自分が思った通りのツヤが出せたら、完了です。
床面処理はやらなくても良いの?
処理されてないモノも、目にする気がするけど・・・?
たしかに、床面処理をしていない製品も世の中には多くあります。
実際のところ、床面処理をしなくても製品は出来上がるからです。
ではなぜ、床面処理をしないで製品化する場合があるのでしょうか。
理由は、主に以下の3つであると考えています。
床面処理をやらない理由
- 作り手が革そのままの質感が好み
- 床面処理剤のコスト削減
- 床面処理にかける時間の削減
革本来の手触りや、見た目が好きで「わざと磨いていない」ということも良く見受けられます。
その方が、本革っぽさが前面に出たり、ワイルド感を出せたりもするからです。
こちらは床面を磨いてないキーケース。
ワイルド感はありますが、汚れが目立ちますね。
こちらは床面を磨いているキーケース。
ツルっとしていて、汚れの付着を抑えています。
でも、床面処理をしない理由としては、やはり残りの2つが多いかと思います。
床面処理をするには、処理剤の購入費と、それに掛ける時間と手間が必要です。
ですので、『商売』を考えて『あえてやらないことにしている』人が多いのが事実です。
実際、床面を磨いてなくても、売れるものは売れていきますからね。
ネットの商品もそうですが、注意して見ると、店頭の商品も磨いてないモノは結構ありますよ。
たしかに、それも一つの考え方です。
特に、商売の観点で考える場合は、出来るだけ手間を掛けずに利益を出すことが大事ですからね。
でも、磨くかどうか決める前に、『床面処理をする理由』をもう一度考えてみましょう。
理由のひとつは、見た目のUPでしたね。
そうです。床面処理をすると耐久性が上がるというお話をしました。
つまり、作品のクオリティを高く仕上げるには、床面処理をした方が良いということです。
個人的には、やっぱり細かいところまで手が行き届いているのが良いモノだと思いますし。
自分で使う場合も、誰かにプレゼントする場合も、丈夫で長持ちする革小物が良いですよね。
一職人としても、そんなレザークラフト魂を持って作品作りを続けています。
【まとめ】床面処理はレザークラフトの基本
レザークラフトの基本工程とも言える床面処理について紹介しました。
床面処理をすると
- ツヤツヤで見た目UP!
- 手触りがツルツルに!
- 耐久性がUP!
- 余分な水や手脂から守る!
- 埃や砂から革を守る!
- 結果、長く愛用できる!
床面処理は、見た目と耐久性のUP。
耐久性のUPは目に見えて効果を感じるのは難しいですが、見た目はすぐに実感できます。
床面処理をした方が綺麗な作品になるので、作るのを楽しめると思いますよ。
ちなみに、先ほど床面処理の手順紹介で使っていた丸平タイプのスリッカーですが、大きいサイズ(2デシ位)をアレで磨こうとすると、指の関節がギシギシして痛くなります・・・。
床面に押し付けながら前後させないと磨けないので、指の関節に負担が掛かるんですよね。
そんな悩みを解決してくれる、ウッドブロックというアイテムもあります。
持ち手がついていて、質量もそこそこあるので、指の関節に負担を掛けずに磨けますよ。
床面処理の専用アイテムですし、関節痛を避けたい人にはおすすめです。
手間も時間もかかる床面磨きですが、やるだけのメリットはあります。
綺麗な作品作りのために、上手にできるようになっておくと良いでしょう。