ここでは、レザークラフトで用いられる『ゴムのり』の使い方や特徴をご紹介します。
レザークラフトで使う接着剤を調べると、色々なモノが出てきますよね。
主な接着剤
- ゴムのり
- ダイヤボンド
- G17ボンド
- サイビノール
- 水性ボンド など
始めたての頃は、そんな疑問を持つ方も少なくありません。
その疑問を払拭できるよう、ゴムのりを使うメリットや、活躍する場面をご紹介します。
『ゴムのり』の使い方&特徴
ゴムのりと一口に言っても、市場には色々な製品があります。
この記事では、最もポピュラーで使いやすい『クラフト社のゴムのり』をご紹介していきます。
ゴムのりってどんな材質なの?
ゴムのりは『溶剤系接着剤(天然ゴム系)』です。
カンの中身はこんな感じです。(減っているのでちょっと見えにくいですが・・・)
どのくらいの溶剤になっているかと言うと、けっこう柔らかめ(ゆるい)です。
ヘラを突っ込んで、そのまま持ち上げた時の手応えはこんな感じ。
非常に伸びが良く、広範囲にも塗りやすいのが特徴です。
これは、水性ボンドやG17ボンドなどと比べてみると良く分かります。
鼻を近づけてしっかり匂いを嗅ぐと、少しツンと来ます。
あと、天然ゴムなので、ゴムっぽい匂いも感じますが、よくある接着剤と大差ありません。
私的には、あまり気にならないですが、周りに人がいたら気を遣うかな~というレベルです。
(家族がいる時は、換気扇を回して作業してます。「臭い!」と言われたことはありません。笑)
さて、次にゴムのりとはどのように使うのかを見ていきましょう。
ゴムのりの使い方
ゴムのりは、接着したい部分に対して、両面に塗布して使います。
塗布したゴムのり同士がくっつく仕組みになっているので、片面だけでは接着できません。
以下は、メーカー推奨のゴムのりの使用方法です。
この焦げ茶色の牛革を、ゴムのりで接着します。
まずは、接着したい箇所の両面に、ヘラを使って塗布します。
少し乾かして、指で触ってもゴムのりがつかないくらいになったら、接着する頃合いです。
乾いてから、と言っても待つ時間はほとんどありません。
ゴムのりは数秒で乾いてくれるので、むしろ『乾き切る前に塗る』ササッと塗るイメージです。
とはいえ、乾いてからもしばらく粘着が持続してくれるので、あまり焦る必要もありません。
※右から3分の2くらいのところまで塗布してあります。
貼り付けたら、ローラーやヤットコで圧着して接着完了です。
乾燥させてから貼り合わせて圧着することで、しっかり接着力が発揮されます。
ローラーで圧着したので、もう引っ張っても簡単には剝がれません。
※圧着後は、けっこう強く引っ張っても剥がれません。
逆に言えば、圧着させる前であれば剥がしやすいのも、ゴムのりの特徴です。
あえてしっかり圧着させずに、後で縫い付ける予定の箇所などに対しての『仮止め』で重宝します。
※『一度くっ付けたら剥がせない』接着剤とは違うものです。
まずは、ゴムのりはこういうモノだと覚えておきましょう。
必要になる場面については、記事の後半でご紹介していきます。
ゴムのりの用途は『仮止め』
ゴムのりの用途は、完全なる接着ではなく『仮止め』だという話をしました。
クラフト社のゴムのりの商品概要欄にも、こう書かれています。
最終的に縫い付けるまでの『仮止めが主な目的』なので、実は接着力が弱めに作られています。
つまり、以下の『がっちり接着するタイプの接着剤』とは、そもそも用途が少し違うのです。
がっちり接着するタイプ
- ダイヤボンド
- G17ボンド
- サイビノール
- 水性ボンド など
ゴムのりとゴム系ボンドの比較
ちなみに、ダイヤボンドもG17ボンドも、ゴムのりと同じゴム系の接着剤です。
ですが、速乾性のボンドで粘着力も強いため、仮止めとして使うのは難しいです。
ゴムのりと白系ボンドの比較
サイビノールや水性ボンドは、白ボンドや、酢ビ系ボンドと呼ばれます。
これらは乾くまでの時間が長く、固まるまでは位置を直しながら付けることができます。
ただし、乾いた後の接着力はゴムのりと比べてすごく強いです。
そのため、剥がす時に革が伸びたりしてしまうし、仮止めには向きません。
仮止めに使う接着剤として、ゴムのりは必要になる!
それは、ゴムのりが必要とされる場面を通して確認していきましょう。
『ゴムのり』の使い方|必要な場面
ゴムのりが良く使われる場面をいくつかピックアップしました。
ゴムのりの用途
- ファスナーの接着
- 革と革の接着
- 型紙の作成
それぞれの場面に沿って、どのようにゴムのりが活きるのか見ていきましょう。
ファスナーの仮止め
仮止めと聞いてまず想像するのは、ファスナーを付けたい時です。
ファスナーは最終的に縫い付けますが、位置を決める時に、ゴムのりで仮止めをします。
この時、ファスナーが微妙にズレている箇所が出てきたとします。
その時、指をグッ押し付けるようにすると、少しずつ修正できるのが『仮止め』の魅力です。
仮止めをしないとなると、『一発で決めないと失敗する』という事です。
もしも、速乾ですぐに固まる接着剤でミスをした場合、ファスナーを引っ張って剥がすことになりますが、床面が剥がれたり、最悪の場合、革が伸びます。
そのリスクを避けるために仮止めが必要です。
特にファスナーは、L字に付けるなどカーブも生まれるので、慎重に貼りたいところです。
ゴムのりは粘着保持時間も長いので、焦らず、慎重にファスナーの位置を決めることができます。
もし位置決めに思いっきり失敗しても、ファスナーを貼りなおすことも可能です。
革同士の接着や仮止め
革を貼り合わせる時にも、ゴムのりは活躍します。
例えば、こんな感じでカードポケットを作る時などです。
このカードポケットのパーツも、最終的には縫い付けますよね。
でも、そのためには表の革と重ねたまま菱目を開けたいので、仮止めが必要になります。
そんな時も、接着力が弱めなゴムのりの出番です。
そして、更にもう一つ利点があります。
ゴムのりなら、仮に間違って内側に接着剤を塗りすぎてしまってもリカバーしやすいのです。
例えば、ゴムのりを塗る箇所を、こんな感じではみ出してしまったとします。
もしはみ出して部分まで接着してしまっても、接着後もヘラなどで簡単にリカバーできます。
もし、がっちりタイプの接着剤を使っていたとしたら・・・?
がっちり接着されている場合は、剥がす時に作品へのダメージが懸念されます。
そもそも、こんなにはみ出さなければ良いんじゃない?
そうですね。
上の例でも、かなり大げさに塗る範囲をミスしていますし、さすがにその場で分かりますよね。
ミスに気付かず貼るのは現実的に無いでしょうし、実際には、そこまではみ出さないと思います。
ですが、革の端に沿って塗布した時のボンド層が厚くなっているとどうでしょうか?
接着後にローラー掛けをした場合、その厚み分、接着剤が左右に広がってしまいますよね。
例えば、G17ボンドと言った粘度の高い接着剤は、基本伸ばしにくい部類です。
伸ばしにくいということは、意外とボンド層が厚くなってしまいがちに。
その結果、カードが入る部分や、最悪コバの方にまで、接着剤がはみ出てしまうことがあります。
ゴムのりの場合は、薄く延ばしやすいので、圧着後にはみ出すというリスクが低い。
更に、仮にはみ出てしまっても、接着力は弱めなので簡単にリカバーできるという利点があります。
型紙の作成
私は、図面を印刷したコピー用紙を厚紙に貼って、型紙を作っています。
地味に「ゴムのりって便利だなー」って思うのが、この型紙の作成の時です。
その理由がこちら。
便利な理由
- 広範囲にサッと塗れる
- 水分によるシワが出ない
単純に作業性が良い事もあるのですが、型紙に変形が起きないのが最大の利点です。
『良い作品を作るための第一歩は型紙作成から』
なので、寸法のズレは絶対回避したいです。
ところが、貼り付ける時にシワが発生すると、シワの分だけ図面がズレてしまいますよね。
ゴムのりと、水性ボンド(あえてちょっと多めに塗布)で、貼った場合を比較してみましょう。
どちらも、塗布した後にローラーを掛けています。
ですが、左の水性ボンドで貼った方は、けっこうシワになっているのが分かりますよね。
更に、水性ボンドは乾いた後の引っ張る力がスゴいので、1mmの厚紙でも沿ってしまいます。
型紙が1mmズレてしまえば、切り出す革も1mmズレてしまいますから、死活問題ですよね。
それを避けるため、私はいつもゴムのりを使って型紙を作っています。
また、水性ボンドの場合、乾く前に貼らないといけません。
上の例では、小さいパーツなのであまり気にしなくてもできますが、大きいパーツだと焦ります。
ゴムのりなら乾いた後も粘着が持続するので、ボンドよりは落ち着いて塗布できるのも良いですね。
ゴムのりと両面テープでの仮止め|比較
はい、両面テープも仮止めの方法の一つですね。
ただ、私はあまり両面テープは使いません。
これは個人的な好みになるかもですが、両面テープは最終的に剥がしたいんですよね。
理由は、テープの厚みが綺麗なコバ作りの妨げになるからです。(微々たるものですが)
あと、テープを剥がすときって、床面が荒れるんですよね。
床面が荒れても目立たない位置に貼ると、今度は菱目の場所とかぶって穴を開ける時にベトベトに。
ゴムのりで仮止めすれば
- 最後に剥がす手間が無い
- 床面を痛めることが無い
- 菱目を打つ時ベトつかない
手順として両面テープが必要になる時もあるので、そういう時はもちろん使います。
ただ、私の中では、ゴムのりとは使い分けているということです。
【まとめ】ゴムのりは使いやすい接着剤
ここまでご紹介してきた通り、ゴムのりは『仮止め』でその力を発揮します。
逆に、がっちり接着するためのモノではなく、それに適した接着剤は他にあるということです。
仮止めしたい時
- ファスナー付け
- 革の裏貼り
- 裏地材の貼り付け など
このように、レザークラフトをする上で、仮止めをしたいタイミングはけっこうあります。
もし仮止め用の接着剤を持っていなければ、ゴムのりがあると大分違うでしょう。
ちなみに、クラフト社のゴムのりは通常300ml。小さいもので80mlのモノもあります。
80mlは割高なので、300mlがおすすめです。
ゴムのり参考価格
- 80ml = 約700円
- 300ml = 約1,000円
「こんなに使うかな?」と考えるかもですが、使い勝手が良いのでガンガン消費すると思います。
あと、仮止め仮止め言ってますが、圧着すればしっかり接着できますし、良く活躍してくれますよ。
もし手元に強力な接着剤しかないのであれば、ゴムのりを使ってみましょう。
『作業のやりやすさ』にも、変化を感じれると思いますし、ぜひ試してみてください。