レザークラフトを始めると耳にする『コバ』とは、具体的にどんなモノなのでしょう。
この記事では、コバの造り&特性、コバ処理をするメリットをご紹介します。
コバとは?その造りや特性を知る
『コバ』は漢字で『木端』と書きます。
革なのに木の端と書くのは、見た目が似ているからだそうです。
こちらは、ヌメ革を切ったままのコバの写真です。
こちらは、ヌメ革を2枚貼り合わせた上で、切ったままのコバの様子。
さて、コバの名前の由来と見た目は分かりました。
個人的に、コバ処理の上達には、コバの事を良く知ることが近道だと思っています。
ですので、次はコバの特性を見ていきましょう。
コバの特性
コバの特性
- 無数の繊維で出来ている
- 切ったままだとガサガサ
- 作品の見栄えに影響
- 作品の耐久性に影響
上記の通り、コバはレザークラフト作品に大きな影響を与えます。
見栄えが悪くのなるのも、耐久性に影響が出るのも、見過ごせませんよね。
木の木端だって、切ったままでは断面がガサつくから、カンナを使って滑らかに整えたりします。
革も同様、切ったままでは、コバはガサガサなので、コバ処理で整えてあげたいところです。
では、なぜガサガサするのか。
次に、コバ(革)の造りについて少し掘り下げてみましょう。
コバ(革)の造り
そもそも、革の組織は、枝分かれした繊維束で形成されています。
銀面に比べ、トコ面の方がその繊維が粗くなっており、ガサガサするのは、主にトコ面の繊維です。
以下の写真で、細かい繊維の様子が良く分かると思います。
銀面=革の表面 床面=革の裏面。
部位によって磨き方を変える
また、革は部位によって、繊維の太さや密度が異なります。
部位が『バット』の場合
太い繊維束が枝分かれし、細かい繊維が絡み合っているため、密度が濃く、固めの革。
部位が『ベリー』の場合
枝分かれの少ない繊維があまり絡み合ってないので、密度が低く、柔らかめの革
ちなみに、『バット』とはお尻の革、ベリーとはお腹の革のことを指します。
あります。
部位によって革の固さが変わるということは、コバ処理をする際の手応えも変わるんです。
ココがポイント
いつも、同じ番手のやすりで削って、同じ力で磨くのではなく、革質によってやり方をアレンジする意識も大事。
例えば、柔らかいベリーの革を、バットと同じ力加減で磨くと、コバが潰れてしまうことも。
とはいえ、かなり微妙な違いではありますので、極端にやり方を変える必要はありません。
あくまで意識として持ってるかどうか、という位で良いと思います。
『牛革の部位による質の違い』が気になった方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
革によって磨き方を変える
また、部位だけでなく、革の種類によっても手応えは変わります。
例えば、オイルレザーとヌメ革のコバを磨く場合では、結構違うものです。
そもそも、オイルレザーやプルアップレザーなどの革に油分をたくさん含んでいる革の場合、コバは意外とガサつきません。
また、革に含まれた油分により、汚れもある程度はじいてくれます。
ヌメ革などのコバに比べれば、磨かなくてもある程度見栄えも綺麗だし、耐久性も高いです。
ですが、磨けばツヤも出ますし、耐久性も上がるので、磨くことをおすすめします。
ただし、革が柔らかくて潰れやすかったり、繊維の感じが少し違うので、磨き方は少し変えてあげる必要があると感じています。
私も、エルバマットやイビザなどのオイリーな革を使うことがあります。
その時は、以下のことを意識してコバ処理をしています。
オイルレザーのコバ処理
- 裁断で可能な限り平滑に
- やすりの番手を上げる
- ウッドスリッカーで磨く
(帆布は極力使わない)
コバの繊維の違いで、作業に明確な違いが生まれるという一つの例でなります。
ただし、コバの磨き方は作り手の好みに左右されるので、上記が正解というわけではありませんから、参考程度にといったところです。
って「二世」が言ってた!
コバ処理:磨くことによるメリット
さて、いよいよコバ処理のメリットについてご紹介したいと思います。
コバ処理のメリット
- 手触りがツルツルに
- 見栄えがツヤツヤに
- 耐久性・防水性UP
ツヤツヤツルツルにするコバの磨き方は、こちらの記事をご参考ください。
手触り・見た目UP
実際に、切ったままのコバと、磨いたコバを比較してみましょう。
以下の写真をご覧ください。
※磨き剤は、トコフィニッシュを使用。磨いた方はヘリも落としたので、コバが少し丸みがかっています。
磨いた方のコバは、見た目ツヤツヤですね。手触りもツルツルになっています。
中には、わざとコバを磨かずに、その見た目をデザインとして生かすこともあります。
ただし、その場合はコバの繊維に汚れが蓄積したり、汗や水を吸ったりと、耐久性が落ちるといったデメリットもあるので注意です。
耐水性UP
先述したとおり、革は、無数の絡み合った繊維から出来ていました。
繊維がむき出しだと、言ってみればタオルのように汚れや皮脂を吸収する特性があるのです。
ココがポイント
コバ処理は、汚れや水分から、革の繊維を守ることに繋がる。
ひとつ、実験してみましょう。
実験の内容
- コバでコーヒーを撫でる
- 撫でるスピードは同じにする
- すぐにコーヒーを拭き取る
- コバの汚れ具合を確認する
切りっぱなしのコバと、磨き上げたコバで、コーヒーをそれぞれ「スーッ」と撫でてみます。
そして、それぞれのコバの吸収具合を比較してみましょう。
結果は、一目瞭然ですね。
言うまでもありませんが、左が磨き上げたコバで、右が切りっぱなしのコバです。
右側は、ほとんどのコーヒーをコバの中に吸収してしまいました。
コバを拡大してみると、シミになってしまっているのが分かります。
反対に、磨き上げた方のコバは、全くコーヒーがついている気配がないですよね。
手順通り、どちらのコバも、コーヒーを撫でた後はすぐにティッシュで拭き取りました。
コバを磨いた方は色水をはじいてくれているので、簡単にぬぐい取ることが出来ました。
逆に、切りっぱなしのコバの方は、完全に繊維の中まで吸収してしまい、拭き取れませんでした。
耐久性UP
最後に耐久性についてですが、これはフローリングのワックスと同じです。
革の繊維の手前に、トコフィニッシュなどの磨き剤で出来た保護層がありますので、直接革にダメージが入りづらくなります。
また、コバワックスを使うことで、よりコバの耐久性、耐水性を上げることが出来ます。
コバを極める=クオリティUP
コバ処理には、様々なメリットがありましたね。
まとめ
- 見た目がツヤツヤになる!
- 手触りがツルツルになる!
- 汚れにくくなる!
- 傷つきにくくなる!
- 革によって磨き方を変えると〇
- 部位により磨き方を変えると〇
コバ処理を極めること=作品のクオリティを高めるということです。
まだコバ磨きを試したことが無い人は、ぜひやってみてくださいね。
特に、革小物の販売を検討されている方は、ライバルに差をつける重要な要素となります。
(コバが磨かれてない商品は、注意して見ると結構あります。)
コバは細かい部分ではありですが、そういう所にこそ注力していきたいものです。