革素材は、動物の身体(部位)のどこを使われているかによって、それぞれ違った特徴を持っています。
例えば、人間のヒジがしわしわだったり、カカトの皮が比較的固かったりしますね。
動物の革も部位によって「やわらかさ」「強度」「シワ」などに違いがあります。
牛革に関しても同様で、生体的に良く動いている肩などは比較的シワが多いなどの特徴があります。
この記事は、そんな部位ごとの違いについて、それぞれの特徴をまとめております。
こんな方におすすめの記事です
- 革を買おうと思っているが、部位の特徴がわからず購入に踏み切れない
- ショルダーやベリーなどよく目にするが、詳しくは知らない
- 自分の作りたい革製品は、どの部位が向いているのか知りたい
- 大判の革「サイド」や「クロップ」とは何か知りたい
- 革の繊維方向(伸びる方向)について知りたい
牛革の部位7種類 名称とその特徴
牛革の部位の名称は主に7つに分類されています。
革を購入するときに良く目にする部位からご紹介していきます。
ベンズ(BENDS)
ベンズとは背中から腰にかけての部分です。
※写真は、手持ちのヌメ革の半裁の革を鏡面コピーで、丸革(一頭分の革)風に編集したものです。
背スジから半分に分けたものをシングルベンズと呼び、分けずに背中全体を1枚にしたものをダブルベンズと呼びます。
背中は大きいので採取できる革も大判になります。大きい革製品をつくろうとすると大判が必要になるので、良く使われます。
もちろん小物にもOKですので、用途としてはかなり広い部位になります。
アップで見るとこんな感じ
シワもあまりなくて、大判でかなり使いやすそうだなという印象です。
ココがポイント
繊維の密度もあり、革に厚みもあるため丈夫
どんな製品に使われる?
バッグ、靴の底材、ベルト、ショルダーストラップなど
ショルダー(SHOULDER)
ショルダーとは肩の部分です。
生態的に良く動かす部位になるので、革もシワになっている場合が多いです。
シワは革独特の「味」になるため、好んで使われます。
アップで見るとこんな感じ
右上のあたりが肩の頂点です。シワシワしてるのがわかりますね。
シワが目立っている部分はかなりやわらかめで、その周囲はベンズに近い質感です。
ココがポイント
ベンズ同様強度もあるが、柔軟性も持ち合わせている。
良く動いていた部位なのでシワがあることが多い
どんな製品に使われる?
バッグ、馬具など
ベリー(BERRY)
おなかの部分です。
繊維密度の間隔がひろいため、人間のおなかと一緒でやわらかめとなっています(笑)。
主に柔軟性が求められる革製品に使われます。
やわらかい革はカチッと形の決まった製品は作りにくいといったデメリットにもなります。
アップで見るとこんな感じ
写真ではわかりづらいですが、次に紹介するバットやレッグと比べるとかなりしなやかです。
ココがポイント
軽くて、伸びやすい。
どんな製品に使われる?
バッグの内張、小物など
バット(BUTT)
おしりの部分です。
ベンズ同様、大判で採取でき、厚みもあって丈夫です。
ベンズと比べて比較的シワが少なく、綺麗な銀面なので色々な製品に使われます。
アップで見るとこんな感じ
表面はツルツルで固め、とても丈夫な印象です。ほとんどシワも見られません。
ココがポイント
厚くて丈夫。シワも少なめでツルツルしている
どんな製品に使われる?
バッグ、ベルト、財布など
レッグ(LEG)
脚の部分です。
採取できる面積が小さいため、主に小物の制作などに使われます。
生態的に脚も良く動かす部位なので、革は厚く丈夫になっています。
アップで見るとこんな感じ
少しシワも目立ちますが、ツルツルしていてとても触り心地がいいです。
ココがポイント
厚くて丈夫。特に強度が高い。ツルツルしている。
どんな製品に使われる?
財布、革小物、バッグの取ってなど
ネック(NECK)
首の革です。
(手持ちの革にネックとヘッドがなかったので、それっぽく付け足しています・・・!)
レッグ同様、面積が少なく大判が必要とされる革製品の制作には向きません。
やはり生態的に良く動かす部位なので、これもレッグ同様、厚くて丈夫です。
使い勝手があまり良くないので、さほど市場にも出回っていないようですね。
ココがポイント
厚くて丈夫。特に強度が高い
どんな製品に使われる?
調査中
ヘッド(HEAD)
頭の革です。
レッグ、ネック同様、大判では採取できません。
頭蓋骨を覆っているだけで、あまり動かない部位なので革は薄く、丈夫ではありません。
用途もほとんどないようですね。
ココがポイント
薄く、丈夫ではない。
どんな製品に使われる?
調査中
次に、「部位をいくつか含んだ状態で裁断された革」の呼び名も紹介していくね!
「サイド」や「クロップ」ってなに?
サイドやクロップという単語も、革を購入するときに良く目にします。
これは先ほど紹介した革の部位が、それぞれ単体でなく、まとめて裁断された状態のものを言います。
革を買う時、製品情報の部位の項目に、サイドやクロップと記載されていることも多いので覚えておきましょう!
サイド(SIDE)
いわゆる「半裁」です。
牛一頭分の革を背中に沿って半分にした状態の革をサイドと呼びます。
サイドは、全ての部位が半分ずつ手に入ります。
色々な部位に触れてみたい人は、半裁を買えばひと通り触ることができますよ!
自分が作る革製品にはどの部位がマッチしているのか、またどの部位が好きなのか。
今後、どんな革を買っていくかを決める上でとても参考になります!
カチッとした革小物を作りたかったから、固めでツルツルしたバットやレッグが好きだった!
クロップ(CROP)
上記のサイドから、ベリーとレッグ(おなかと脚)を除いた状態の革をクロップと言います。
主に、ショルダー、ベンズ、バットが含まれている革になるので、そのあたりの部位を中心に欲しい人に向いています。
※ベリー(おなか・脚)
部位の名称の紹介で、ベリーはおなかの部分だと言いました。
ただ、一般的にベリーとレッグ(脚)を含んだ革のこともベリーと呼ばれることがあります。
紛らわしいですが覚えておきましょう!
サイド(半裁)を頭からおしりにかけて半分にすると、クロップとベリーが出来上がるのですね。
ネットで買う場合は実際のものが見れないケースが多いので、「ベリーって書いてあったからおなかの部分だけだと思ったら、レッグもついてたラッキー!」・・・なんてこともあるかも?(笑)
部位によって伸びやすい方向がある
革には、その性質上、伸びやすい方向というものがあります。
下図のような繊維方向になっていて、矢印に向かって引っ張った方が、革が伸びやすいのです。
例えば、手袋などを革で作るとき、指が動かしやすいように関節の部分が曲がりやすいと使い勝手が良いですよね。
逆に、指の関節の部分が固いと手をグーに握りづらくて、使いにくいという印象になってしまいます。
革の伸びる方向を考えて作ることも、とても大事なことなのです。
革(部位)の特徴を活かして作る
良い手袋は、親指部をレッグ、親指の以外の4本部分についてはベリー、手首にはベンズを使用するなど、部位の特徴を活かされて制作されます。
また、革の伸びる方向も考慮し、指が動かしやすいように作られていたりします。
親指のレッグについては別で裁断したものを縫い付けますが、その他の4本の指、手の平の部分は一枚モノの革で出来ていますから、ベンズもベリーが1枚になっている「サイド」を仕入れる必要がある、ということになりますね。
お財布なども、外装は固めの革でつくって、内装(小銭入れ)はやわらかめの革で作られていることが多いです。
メモ
革の厚さで固さを調整している場合もあります。
同じ部位でも、1mmと2mmだと革の固さがかなり変わります。
牛革の部位の種類・特徴【まとめ】
革製品は、製品をより良いモノにするために、熟練者の工夫がいたるところに凝らされています。
同じお財布を作っても、革の部位の違いで出来栄えが全然変わってきますので、部位の特徴についてはぜひ知っておきたいですね!
まとめ
- 何をつくるかでどの部位を買うか決めると良い
- バックを作るなら「ショルダー」「ベンズ」「ベリー」がオススメ
- 財布をつくるなら「バット」「レッグ」がオススメ
- 革の特徴をひと通り肌で感じるならサイド(半裁)を手に入れると良い!
- ひとつの革製品は、いくつかの部位の特徴を活かして作ることも重要(熟練者!)
レザークラフト初心者の方へ
まずは深く考えずに革製品を作ってみましょう!
部位の特徴についてはやっているうちに気になりますので、自然と覚えていきます。
あと個人的な見解ですが、ネット通販で革の部位情報が書いていない場合は、良い意味で汎用性が高く、扱いやすい革であるケースが多いです。基本はそれでなんでも作れますよ!
ちなみに僕が最初に買った革は「和乃革」さんの本ヌメ革(染色仕上げ・キャメル)です。
A4・A3・半裁サイズがあったのですが、試しにA4サイズを厚さ1mmで買いました。
しっかりしていて手触りがなめらかで、とても良い革でした。
(この革に触れてからは、手芸量販店で売っている革は買えなくなりました・・・)
初めて作った作品がその革を使用したペンケースだったのですが、革の良さがきわ立ってくれたおかげで「なんか良いもの作れた!!」と、大満足でした。
きっとお気に入りになりますので、ぜひ触れてみていただきたい逸品です。
さいごに
「革素材」というのは、革の品質、なめし手法、表面加工方法、また動物の年齢・種類・品種などによっても特徴が異なりますので、同じベリーの革でも、全く違う見た目、手触りのものが実に多種多様で存在しています。
ドンドン経験を積んで奥の深いレザークラフトの世界にどっぷり浸かる。これもレザークラフトの醍醐味と言えるでしょう!
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