先日、2022年開催のレザーソムリエ【皮革講座Basic(初級)】に参加してきました。
講座の魅力を知ってもらいたいので、概要や、体験した感想などを綴ります。
レザーソムリエ 皮革講座Basic【概要】
まずは、レザーソムリエ 皮革講座Basicの講座の概要をご紹介します。
講座の概要
- 挨拶・講師紹介 5分
- 座学(映像有) 45分
- 休憩 10分
- 実習 80分
- 座学 20分
- 質疑応答 10分
- アンケート記入 10分
上記の内容で、合計3時間ですが、あっという間に終わってしまいました。
開催場所は、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡。
ちなみに、参加費はなんと『無料』です。
そもそもレザーソムリエの資格とは
『レザーソムリエ』という資格があるなんて聞いたことない!
という人も多いのではないでしょうか。
レザーソムリエとは、簡単に言えば『革に詳しい人』のことです。
以下は、レザーソムリエの公式ホームページから抜粋したものです。
『レザーソムリエ』について
皮革業界では、皮革及び革製品について正しい知識を持っていただき、皮革および革製品を愛用し、楽しみ、より多くの皆様に使っていただきたい、そんな想いから、皮革講座や皮革試験等を活用し、「レザーソムリエ」を育成することにいたしました。
革とは何か、皮革の種類や鞣しの方法、革の良さやお手入れ方法など幅広く学んでいただき、レザーライフを多くの皆様に楽しんでいただけたらと思います。
日本革類卸売事業協同組合/一般社団法人日本皮革産業連合会
資格試験は年に1回、秋頃に行われています。
今年行われるのが第6回なので6年目(?)と、まだ出来て間もない資格です。
講座でも説明がありましたが、現在、レザーソムリエは1000人位になったそうですよ。
合格すると、この『認定バッジ』や認定証がもらえます。
レザーソムリエ 資格取得に役立つ
そんなレザーソムリエの資格取得に役立つのが、今回参加してきた【皮革講座Basic(初級)】です。
名だたる講師陣から、革のなんたるかや、なめし方や加工の違いなどをレクチャーしてもらえます。
ちなみに、なぜ(初級)となっているかというと、実はレザーソムリエには、BasicとProfessionalの2段階の資格があるからです。
Professionalの資格に合わせた講座は、皮革講座Professionalとして別で開催しています。
(今年は大阪のみの開催のようで、参加はできそうにありませんが・・・。)
更に余談ですが、Professionalの資格試験はまだ一度も実施されていません。
コロナの影響もあってか、準備中が続いています。
ただ、昨年の秋に「2022年には第1回試験を実施」と、公式ページでニュースが出ていたので、今年は受けられるかもしれませんね。
皮革講座Basicの見どころ【座学編】
さて、前置きが長くなってしまいましたね。
いよいよ、皮革講座の内容についてご紹介していきたいと思います。
まず、座学に関しては、正直ネットや本で勉強できる内容もあるとは思います。
既にある程度、革についての知識がある人は、ほとんど知っている内容かもしれません。
ただ、説明してくれる講師が、皮革業界にもろに精通している方々なので、その情報の『正確性』や『緻密度』は言うまでもありません。
これから革について勉強するという人にとっては、ネットで情報を精査しながら集めるよりも、すんなりインプットできることでしょう。
革が出来るまでの工程が分かる
『動物の皮』から『革』へは、どうやって加工されているか知っていますか?
革を作る人はタンナーと呼ばれるのですが、そのタンナーさんの仕事ぶりは、今の情報社会でも中々見ることがないですよね。
昨今では、Instagramなどでタンナーの作業風景のショート動画などもあったりします。
ですが、作業の順番も分からないですし、なんとなく雰囲気が分かる程度。。
皮革講座に参加すると、革ができるまでの工程を動画で一貫して見ることが出来ます。
皮革工場での、タンナーさんの作業風景を一貫して見れたのはとても勉強になりました。
まさに、革に対するありがたみが増す講義でした。
革製品のケアについて
革製品のケアに関することで、防水の話が出て、これがすごい勉強になりました。
まず、革製品に防水を施す成分には、主に以下の4種類があります。
防水の種類
- フッ素
- シリコン
- 乳化剤クリーム
- 油性クリーム
具体的になにが勉強になったかというと、
「上記の成分でそれぞれ防水処理を施した時、防水の効果の違いが歴然だった」
ということです。
上記の4種類の防水を施した革に、それぞれ「水」と「油」を垂らしていきます。
基本的に『水』は、全ての防水処理ではじいてくれます。
ですが、『油』で顕著な違いが出ていました。
下の写真は、フッ素とシリコンの防水に、それぞれ油を垂らした状態です。
革を扱う人にとって、これは一見の価値有りだと思います。
他の成分との違いもお見せしたいところですが、ぜひ講座に行って、講師の方の説明を聞きながら見てもらえたらなと思います。
皮革講座Basicの見どころ【実習編】
次に、皮革講座Basicの実習の内容について簡単にご紹介します。
実際に革に触れて学べる
実習では、まず以下の4つのブースに受講生が分かれていきます。
4つのブース
- 牛革
- 牛革の加工と仕上げ
- 各種動物(小判)の革
- エキゾチックレザー
これらのブースには、以下の写真のように、机の上に所狭しと革が並んでいます。
【牛革ブース】
※カーフ、キップ、ステアのなど。
【牛革の加工と仕上げブース】
※シュリンク、ガラス貼り、ヌバックなど。
【各種動物(小判)の革ブース】
※鹿・山羊・羊・豚革など
【エキゾチックレザーブース】
※ヘビ、ワニ、オーストリッチ、サメ革など。なぜかコードバンも有り。
各ブースには一人ずつ講師がいて、革に対する専門的な知識や見識を説明してくれます。
また、全ての皮は実際に触ることができます。
(むしろ触らないと来た意味ないでしょと言われます。そのとおり!)
例えば、牛革ブースではカーフ、キップ、ステアに触れることが出来ます。
上記は、月齢や性別による牛革の違いですが、それを順番に触れて確かめることが出来るのです。
それぞれ、どれくらい革の質感に違いが出るのか、一度に確認する機会はなかなか無いですから、良い経験になるのではないでしょうか。
なめしによる違い
実習では、なめし方による革の違いも確かめることができます。
なめし方の種類
- タンニンなめし
- クロムなめし
- 混合(コンビ)なめし
3種類を比べられるだけでも充分有意義なのですが、混合なめしの場合で『これはタンニンが1割くらい』とか、タンニンとクロムの割合による微妙な違いも経験することができました。
なめしによる違いについて知りたい方は、以下の記事ご参考ください。
ひとつ個人的な欲を言えば、タンニンなめしの革が少なかったのがちょっと残念でした。
カーフ、キップ、ステアのタンニンなめし100%の革で、どれくらい違いがあるのかなどを見てみたかった・・・(私が、革小物作りでタンニンなめしの革を良く使うから思う事なのかもしれませんが。)
クロムなめしの革が多かったので、服飾系で革を使う人には、特に参考になるのでないでしょうか。
部位・加工による違い
また、部位による違いについての説明も受けることができます。
ベンズ(背中)とベリー(お腹)の違いなどを、間近で見ることが出来ました。
例えば、シュリンク革の場合、革質が柔らかいところの方がシボが大きくなるなど、新しい発見も多かったです。
下の写真がシュリンク革です。ベリーはシボが強烈に出ていますよね。
画質が粗く、そもそもベンズ側のシボが全く見えないかもしれませんね・・・。(ごめんなさい)
要するに、ベリーの方が革の繊維が粗く柔らかいのでシボが出やすいということみたいです。
牛革の部位による柔らかさなどの違いは、こちらを参考にしていただけます。
つまり、シュリンク革を半裁で買う場合は、歩留まりにかなり影響があるということです。
革素材の大きさに対し、実際に得られた生産数量の割合のこと。
逆に、ガラスレザー+顔料仕上げは、究極に歩留まりが良さそうでした。
ガラスレザー+顔料仕上げの革の銀面の見た目は、ほぼ完全に均一だからです。
その代わり顔料が乗っているので、革本来の『味』はありませんが・・・。
子のブースでは、他にもエナメルレザーや型押し革などを実際に見て触れることが出来ました。
バフィングした革の違い
革の銀面や床面を、サンドペーパーで削り、繊維を起毛させることをバフィングと言います。
これも革の加工方法の一つで、繊維を起毛させると、それは滑らかな触り心地になります。
このように、起毛させた革には以下の3種類が存在します。
起毛させて革
- ヌバック
- スエード
- ベロア
この3種類の違いは、ネットの商品写真を見ただけではほとんど分かりません。
ですが、実際に見比べたり、手触りを比べると全然違うものだということが改めて認識できます。
更に、牛革、羊革、豚革など、様々な種類の皮で、バフィングされた革がブースには陳列しているため、全部さわって確認できるため、見識が拡がるでしょう。
ちなみに、各ブースでは3分~5分程度、講師に質問できる時間があります。
結構マニアックな質問も投げかけられたりしていました。
講師の方が回答する度に、「なるほど~」と、つい首を縦に振ってしまいました。
レザーソムリエのテキストとの違い
レザーソムリエの資格取得用に、テキストの販売もされています。
このテキストは、レザーソムリエ公式ページか、皮革講座の会場で買えるものです。
今回の皮革講座Basicは、まさにそのテキスト『レザーソムリエBasic』の内容でした。
答えはNo!と言いたいです。
実は、私もレザーソムリエBasicの資格を持っています。2021年の冬に取得しました。
ですが、皮革講座は受けたことがなかった、もとい受けられなかったのです。
本来、レザーソムリエ皮革講座を受講してから資格取得を目指したかったのですが、コロナの影響で講座は軒並み中止になってしまっていました。
今回の2022年6月に実施した講座が、実に3年ぶりだったようです。
そんな経緯もあって、ソムリエの資格は、テキストで勉強して取得するしかなかった訳です。
しかし、テキストで勉強して知識はついたものの、実地で役立つものなのかという疑問が残りました。
少し考えてみてください。
ワインを飲んでないのに、ワインのソムリエになったって言われても、「え?」って感じですよね。
色んな革に触れつつ、その革の事情を知ってこそのレザーソムリエではないでしょうか。
実際は、テキストで勉強しながら色んな革を買ってみたり、革問屋さんで色んな革に触れたりと、革の勉強に励んではいましたが、なんとなく地に足がついていないように感じていました。
しかし、皮革講座を受けることでなんとなくしっくり来た気がします。
ここまで紹介してきたように、この皮革講座は初級と言えども、革のマニアックな部分が垣間見える講座でした。
牛革の月齢による違いによって、微妙に変わるテイスト。
加工方法が同じでも、動物の違いによってどんな違いが生まれるのか、などがそうです。
実際にその違いを味わうのは、まさに「レザーソムリエ」になった気分にさせてくれました。
更に、講師からの詳細かつマニアックな説明も聞けるのだから、これはこの講座に来ないと味わうことができないでしょうし、ネットで調べるだけでは足りないと思わせてくれる講座だったのは間違いありません。
『レザーソムリエ』の資格取得をするなら、テキストだけでの勉強ではなく、ぜひこの講座を受けることをおすすめさせていただきます。
レザーソムリエ 皮革講座【まとめ】
皮革講座Basicに行かないと、分からないことが結構あったと思います。
3時間という短い時間ではありましたが、とても勉強になりました。
(運営及び講師の方々、有難うございました。)
実は、講座が終わった後も、講師の方が残ってくださり、それぞれ専門的な話をもっと聞けました。
半分くらいの受講生は終わってすぐ退室しましたが、もう半分は30分近く賑わっていましたよ。
マニアックな質問などをぶつけるならベストなタイミングだったかもしれません(笑)
皮革講座Professionalは、今年は大阪のみの開催のようですが、来年こそは行きたいですね。
そうしたら、Professionalの資格試験も受けてみたいと思います。