革には、タンニンなめしされた革と、クロムなめしされた革があります。
なめし処理の仕方が変わると、同じ牛革でも全く違う特性を持つようになります。
なめし処理の特徴が分かると、どんな革を使えば良いかも分かります。
この記事では、『タンニンなめし』と『クロムなめし』をした革の特徴と、牛革の基本的な知識をご紹介していきます。
こんな方におすすめの記事です
- 「タンニンなめし革」の特徴が知りたい
- 「クロムなめし革」の特徴が知りたい
- 「ヌメ革」の特徴が知りたい
そもそも「なめし処理」とは?
なめし処理とは、動物の皮を革素材に整える作業のことを言います。
具体的には、こんな作業をしています。
なめし処理の工程
- 不要な毛を取り除く
- 脂肪、タンパク質を分解して除去
- 革を漉いて厚みを整える
- 染色
- 乾燥
なめす前は「皮」と呼ばれ、なめし処理をして素材として完成されたものは「革」と呼びます。
そのため、皮の欠点を取り除く「なめし処理」が必ず施されますが、なめし処理にもいくつか種類があります。
なめしの種類
- タンニンなめし
- クロムなめし
- コンビなめし
上記のなめし処理の特徴を見ていきましょう。
※コンビなめしは、タンニンなめしとクロムなめしの両方のメリットを取り入れたなめし処理のこと。
『タンニンなめし』の特徴
タンニンなめしとは、植物のタンニンという成分を用いるなめし処理方法です。
タンニンなめしの特徴
- 手間と時間がかかるため、値段は高め
- 成形性が良い
- 経年変化(エイジング)を楽しめる
- クロムなめし革より耐熱性がやや劣る
タンニンなめしをすると【成形性が良い=少し固めの革】が出来上がります。
革がペラペラしてないので、お財布などのカシッとした革小物の制作に適しています。
また、ヌメ革もタンニンなめしをした革です。
『ヌメ革』の特徴
ヌメ革の特徴
- タンニンなめしで作られている
- 表面加工もほとんど無し
- 基本、染色もされていない
- 一言で言うと「革の中の革」
ヌメ革は加工が少ないので、ナチュラルな風合いの革になり、見れば「本革」と分かります。
「革の代表格」と言っても差し障りないでしょう。
ヌメ革は表面加工もほとんどしないため、牛がもともと持っていた傷やシワ、血管の跡などもわかる状態に仕上がります。
傷やシワがあるのは好き嫌いもありますが、それらは革の味になり、作品に活かされていきます。
ヌメ革の見た目(写真)
こちらは、牛ヌメ革のショルダー(肩)の部分の写真です。
ご覧の通り、革本来が持つ色で仕上がっています。
そしてこちらは、レッグ(足)の部分です。
ショルダー同様、シワがハッキリと分かりますね。
ヌメ革で、特に傷・シワが多い部位の写真をご覧いただきました。
もちろんヌメ革にもツルツルで綺麗な部分はたくさんあります。
部位によってシワの入り方や、柔らかさなど特性が変わります。
部位の特徴を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
写真のヌメ革を使って名刺れを作ると、こんな感じに仕上がります。
このように、タンニンなめしされた革や、ヌメ革は、成形性が抜群です。
『クロムなめし』の特徴
クロムなめしとは、化学薬品を用いて行われるなめし処理方法です。
植物由来のタンニンを用いる場合と違って、革が柔らかくなります。
クロムなめしの特徴
- 短時間で大量生産できる
- 比較的安価
- 柔軟性、保存性、耐熱性、染色性に優れている
こちらは、クロムなめしされた革の写真です。
クロムなめしの場合、革に柔軟性が出てやわらかい仕上がりになります。
そのため、伸縮しやすくペラペラしています。
また、タンニンなめし革と違い、コバを磨くのが非常に困難です。
(できなくはないのですが、好んでやる人はほとんどいないと思います。)
クロムなめし革は柔軟性が高いので、コバを磨いても成形されず、元の形に戻ってしまいます。
なので、コバを綺麗に見せたい時は、ヘリ返しをしたり、染色をして上げます。
染色にはバスコがおすすめです。やり方が気になる方は、こちらをご参考ください。
クロムなめし革は、革ジャンや巾着などの制作に適しています。
衣料や、バッグを作りたい方はクロムなめし革を選びましょう。
混合なめしの特徴
タンニンなめしとクロムなめしの他に、混合なめしという手法もあります。
(コンビネーションなめしと呼ばれたりもします。)
タンニンなめしとクロムなめしを両方施すなめし方です。
この二つのなめしの割合によって質感が変わるので、一概には言えませんが、タンニンなめしとクロムなめしの間のような質感になります。
フランス革のノヴォナッパという混合なめしの革を使ったことがありますが、固すぎず柔らかすぎず、ホントに中間て感じです。
【写真:ノヴォナッパの革】
牛革の基本的な知識・特徴
さて、ここまでタンニンなめしと、クロムなめしの特徴について紹介してきました。
ただ、この記事は「牛革の知識 初級編」としているので、ここで牛革の基本的な知識や特徴も、少しご紹介したいと思います。
牛革の特徴
比較的安価
耐久性が高く丈夫
加工がしやすい
バリエーションが豊富
牛革は、乳牛や肉牛からも採取されるので、供給量が有り比較的安価な革となっています。
更に、丈夫で加工がしやすいため、世の中のほとんどの革製品に牛革が使われています。
ただ、一言で「牛革」と言っても、その種類は多岐にわたります。
牛革の種類
- 牛の年齢や性別で変わる
- 肩やお尻などの部位で変わる
- なめし方法で変わる
- 加工方法で変わる
それぞれの種類の呼び方の例としては、カーフスキン、ステアハイド、ショルダー、ベンズ、オイルレザー、ヌメ革、クロムなめし、顔料仕上げ、スムースレザー、カゼイン仕上げ・・・etc
いきなり全てを覚えるのは大変ですよね。
まずは、革を買う時に迷わないように、本記事で紹介した「タンニンなめし」と「クロムなめし」、それと「ヌメ革」は覚えておきましょう。
もっと革について知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
タンニンなめし&クロムなめし【まとめ】
自分が作りたい作品には、どんな革が適しているかが分かると、革選びで迷わずに済みますね。
まとめ
- タンニンなめし革は成形性が良い
- 財布・革小物づくりにはタンニンなめし
- ヌメ革もタンニンなめし革
- ヌメ革は風合いが生きる「革の中の革」
- クロムなめし革は柔軟性が良い
- 衣料品づくりにはクロムなめし
私は、お財布や名刺入れを作るので「タンニンなめし革」や「ヌメ革」を良く使いますし、逆にクロムなめしの革はほとんど使いません。
ご自身の作風に合う革を、ぜひ色々試してみてくださいね。
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